「航路を守れ」を読んだ感想

世界初の個人向けインデックス・ファンドを創設し、投資の世界に革命を起こした故ジョンCボーグル氏が書いた最後の著書である「航路を守れ」を読んだので感想を書いてみます。本の内容としてはボーグル氏が創設したバンガード社の歴史を綴っており、創設時の苦労や考えを理解されない葛藤などを書いています。

本書の一貫した主張として「ファンドは投資家の利益のために運用されるべき」というものがあります。バンガード社は現存するファンドで唯一の運用方針を採用しており、投資家の利益が最大になるように運営されています。

感想としては一言で言えばそこそこおもしろかったです。ただし、私はインデックス投資を最良と信じている人間なのでそう思うだけで、人によって意見が変わる内容の本だと思います。
また、副題でも書いている通り「物語」であり、投資のハウツー本ではありません。ボーグル氏やバンガード社のファンブック的な本なので興味がなければ読む必要もないと個人的に思います。

本の概要

はじめに

インデックス・ファンドが如何に優秀な投資かひと目で理解できる表がP84に記載されているので書いておきます。

1975年12月 2018年6月 年間成長率
インデックスの資産 $1,100万 $6.8兆 37.4%
業界資産 $459億 $18.3兆 15.8%
インデックスのシェア 0% 37%
年次リターン
S&P500指数 90 2,718 11.5%
中期米国債利回り 7.2% 2.1% 6.9%
株式60%/債券40% 10.0%

1975年から2018年までのインデックス・ファンドの成長率の高さ、S&P500の年次リターンの優秀さがよくわかります。

著者

著者はジョン・C・ボーグル氏です。世界初の個人向けインデックス・ファンドを設定した人物であり、投資の世界に革命を起こした人物です。本の冒頭にある「著者について」に書かれている内容がそれを物語っているので一部引用します。

アメリカの投資家に最も貢献した人間の像を立てるとしたら、ジャック[著者の愛称]・ボーグルに決まっている。

---- ウォーレン・バフェット

伝説の投資も認める人物です。

今から百年後の歴史に残る投資家は、ウォーレン・バフェットとジャック・ボーグルの二人しかいないだろう。

---- スティーブ・ガルブレイス

私が最も印象に残った言葉です。

主張

本書の主張は「ファンドは投資家の利益のために運用されるべき」という考えです。それを行うための投資手法として最も良いのはインデックス投資であるとデータで示し、そして、それらの考えを指針に本の題名でもある「航路を守れ」と謳っています。

株式市場の毎日の変動は無視して長期的な成長を重視することにより投資を成功させるという著者の哲学を総合して「航路を守れ」と表現しています。

バンガード社

航路を守るためにバンガード社は世界でも唯一の会社構造で運営されています。
通常の投信会社はファンドを運用している運用会社の株主の利益を考えなければならないためファンドを買っている投資家と利害が完全に一致しているわけではありません。
しかし、バンガード社は投資家がファンドを所有し、ファンドが自身の運用会社を所有しています。そのため、運用会社とファンド、投資家の利害が完全に一致しています。

この会社構造は楽天辺りの説明図がわかりやすいのでURLを載せておきます。
興味があれば確認してみて下さい。

https://www.rakuten-toushin.co.jp/beginner/special/vanguard/

感想

冒頭でも書いた通り、この本は投資の手法などを教える内容ではなく、著者とバンガード社の歴史を綴った内容になっています。インデックス投資を信じており、著者やバンガード社のファンであればそこそこ楽しめる内容だと思いますが、投資に関する考え方が違う人や手法を知りたい、投資の方法を教えて欲しいと思って読む本ではないです。

ただし、そうは言ってもアクティブ・ファンドに対するインデックス・ファンドの優位性は所々で記載されています。しかし、全てはバンガード社の歴史を説明するためであり、そこに関することを知りたいのであれば有名な「敗者のゲーム」などを読んだほうがわかりやすいです。

まとめると、ジョン・C・ボーグル氏やバンガード社のファンであれば読み物として楽しめるかもしれませんが、そうでなければ読む必要はないと思います。

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