「インデックス投資は勝者のゲーム」を読んで #1【概要】

ジョン・C・ボーグル氏が書いた「航路を守れ」を読んだ後になんとなく再読したくなったので「勝者のゲーム」を読みました。タイトルを見てわかる通り、和訳題名は完全に「敗者のゲーム」の影響を受けています。
ちなみに原題は「The Little Book of Common Sense Investing」なので訳がちょっと大袈裟だと思ったりもします。

この本の主張はインデックス投資を推奨している他の本と同様にとてもシンプルです。コストの安いインデックス・ファンドはほとんどのアクティブ・ファンドに勝つので、個人投資家はインデックス・ファンドを買うことが投資の最適解となるです。 そして、特に重要なのは「コスト」の部分となります。

なぜインデックス・ファンドに勝つことができないのか

投資において「コスト」を差し引く前では市場に勝つことは「ゼロサム」ゲームとなるが、コストを差し引いた後は敗者のゲームになると結論づけています。

つまり、ファンドの経費率の分だけ市場には勝てないのです。ファンドの経費とは信託報酬や購入時手数料のことです。

アクティブ・ファンドの場合は基準となる指標に勝つためにポートフォリオを頻繁に入れ替え、回転させその度に購入時手数料などのコストがかかります。それらがファンドのリターンから支払われることにより、結果としてかかったコスト分だけ市場に負けるというわけです。

最終的に投資の成功と失敗とを分けるのは、コストであると断じています。

コストの低いファンドに投資する

投資を成功させるためにはコストが最重要となります。そのため、投資するのであれば購入時手数料がない (ノーロード) のファンドであり、かつポートフォリオの回転率が少ないインデックス・ファンドに投資をするのが最も効率がよいです。

インデックス・ファンドは「市場平均」とも言われますが、実際は平均以上にリターンを上げています。現在、インデックス・ファンドと比較されているアクティブ・ファンドはアクティブ・ファンド内の競争を勝ち上がっているファンドであり、成績の振るわないアクティブ・ファンドは早期に償還されてしまうからです。つまり、インデックス・ファンドは償還されない成績を残したアクティブ・ファンドと比較されて「平均」と言われており、アクティブ・ファンド全体と比べるとほとんどのファンドに勝つという結果になっているのです。

さらに、長期間 (30年以上) で見た時、インデックス・ファンドに勝てるアクティブ・ファンドは存在しなくなります。なぜなら時間の経過というのは複利にとって有利に働きますが、「コスト」にはマイナスに働くからです。投資期間が長くなるほどコストの高いファンドはコストの安いファンドに勝つことができないのです。

平均回帰

投資商品を選ぶにあたり、多くの投資家は長期的に安定したリターンよりも、短期的に優れたリターンを上げたものを選ぶ傾向があります。昨日の勝者はこれからも勝ち続けると思い込んでしまうのです。

しかし、長期のデータを確認すると「平均回帰」という現象が起こっています。すべてのファンドは市場に対して「勝つ」「負ける」を何回も繰り返し、長期的に平均値に回帰することがわかっています。これは人の感覚でも理解できることだと思いますが、データでも示されています。

すべてのファンドのリターンが長期的に平均値に回帰するのであればパフォーマンスを決める要因はコストしかありません。コストの低いファンドが最もリターンが高くなるのです。

長期に渡って市場平均に勝てるファンドを選ぶのは実質、不可能です。平均回帰という強力な原理が働くからです。よって、市場に勝つことは不可能なのです。

コストを抑える

その他として投資に関するコストでプロにアドバイスを求めるという行為があります。所謂、投資アドバイザーという人たちのことです。

彼らにアドバイスを求めても上述している通り、すべてのファンドは平均に回帰するため、アドバイザーに払う手数料の分だけ市場に負けてしまいます。

優良なアドバイザーであればまだマシな方ですが、銀行や証券会社のアドバイザーの場合は投資家の利益になる商品でなく、会社が売りたい商品を紹介されることが多々あります。それらの商品はコストやポートフォリオの回転率が高いため、結果的に市場平均にかなり劣ったリターンになります。

暴落時の行動について

市場というのは数年間のうちに「暴落」といわれる大きな下げを経験します。1929年から始まった世界恐慌や1987年のブラックマンデー、2007年からの米国住宅ローン危機などが代表的です。

どのような時でも市場に対してリターンを最大化するためにはコストが重要です。この本ではなんどでも出てきます。「コスト」が重要です。暴落時に慌ててポートフォリオを回転させるとその分のコストがかかります。コストがかかると市場から受け取るリターンが減ってしまいます。

つまり、暴落時にとる最も優れた行動は何もしないということです。過去の傾向を長期的に見ると市場は上昇し続けています。市場というのは時間が経てば回復するのです。暴落時でも余計なコストを支払わないことがリターンを最大化する術です。

私の言葉だけを信じる必要はない

この本は各章の終わりに「私の言葉だけを信じる必要はない」と題して、投資の世界における著名人が発したインデックスに関する言葉を載せています。
何人かピックアップしてみます。

当然ですが、インデックス投資を推奨する言葉ばかりとなっています。