ライフサイクル投資術の概略

ライフサイクル投資術と言う本を読みました。
株や債券などの資産分散投資に加えて、時間の分散投資を行うべきだというのが著者の主張です。 その方法として、若いうちは最大2倍を上限としてレバレッジを使い株式を購入することを強く推奨しています。
内容を軽くまとめて見ましたが、戦略として非常に難しいので興味のある人は一読してみてもいいのではないでしょうか。
読みにくいですが......

目次

前提知識

レバレッジ

レバレッジはよく「てこの原理」と言われて説明されています。
「てこ」を利用して少ない資金でも大きな金額を動かす仕組みです。
なんて説明されていますが、要するに自分の証拠金を担保に証券会社からお金を借りて投資を行うことです。

資産分散

株式や債券に資産を分散することです。 資産を分散することにより、リスクを減らしてリターンを最大化するという現在の市場で主流の考え方です。

エクスポージャ

金融資産のなかで価格変動リスクにさらされている資産割合のこと。

ドル・コスト平均法

この本では言及されていませんが、現在の時間分散と言えばドルコスト平均法が基本です。 投資商品を一括購入するのではなく、一定期間に分けて購入する投資手法です。
一括で購入するよりリスクを軽減することができます。

時間の分散投資

資産の分散投資と同様に投資期間も何十年に渡って分散するのが安全です。
しかし、人的資本を考慮するとほとんどの人は市場に投資をしておらず、生涯投資期間で考えるとリスク分散ができていない状態です。 そのため、若い間はレバレッジをかけて株式資産のエクスポージャを増やし、歳をとってからエクスポージャを減らします。そうすることにより、生涯にわたっての株式資産エクスポージャを一定に保ち、リスクを抑えることができます。この戦略をライフサイクル投資戦略と名乗っています。
ただし、レバレッジは最大2倍までとします。

人的資本の現在価値

はじめに、投資を行う際には自分の「人的資本」を考える必要があります。
人的資本とは自分が将来稼ぐことの出来る資金のことで、ライフサイクル投資術ではこれを債券とみなします。 たとえば、年齢25歳で年収300万円のAさんを考えます。
現在のAさんは引退する歳(60歳とします)まで毎年年収300万円を稼げる人的資本を持っていると推定できます。 つまり、Aさんの人的資本は(60-25)×300=10,500万円の現在価値があると考えることができます。

金融資本の現在価値

次に金融資本も人的資本と同様に現在価値を考えます。
Aさんが稼ぐ300万円のうち、貯蓄することができる余剰資金を50万円と考えます。 余剰資金の現在価値は60歳で引退と考え、(60-25)×50=1750万円となります。 これがAさんの金融資本の現在価値となります。 仮に現在、Aさんが株式資産を250万円分持っていたとすると資産割合は株式が12.5%、債券が87.5%となります。

生涯資産の割合

資本の現在価値を考慮すると債券の割合が多く、リスク分散ができていない状態となります。
現代ポートフォリオ理論の考え方だと年齢が若い時は株式を多めに持ち、年齢が上がるとともに債券の割合を多くしていくのが基本です。 しかし、実際は資本の現在価値を考慮していないので、生涯にわたって債券の割合が多くなります。 ポートフォリオの比率は考え方により違いがでますが、若い時はもっと株式の割合を多くするべきです。

レバレッジを使う

年齢が若い時はもっと株式の比率を上げる必要があります。
その株式割合は余剰資金の100%を投資しても全く足りません。(Aさんの割合を参考にしてください) さらに、若い時は投資に使える現物の資金を用意することも非常に難しいです。 そのため、レバレッジを使い株式を購入して、ポートフォリオの株式比率を上げる必要があります。

リスク

ライフサイクル投資戦略を行うことにより従来の投資戦略より生涯のリスクを抑え、リターンを増大できます。
リスクの項目に関しては長いので実際に本を読む方が良いと思います。 著者によると従来の投資戦略である「誕生日ルール」や「株式一定割合ルール」と比較してリスクが低く、リターンは増大すると試算、分析されています。

投資戦略の3局面

ライフサイクル投資戦略では生涯を3つの局面に分類し株式投資レバレッジを調整していきます。
最大2倍のレバレッジをかけるのは若い時期である局面1。 そこから局面2に入り、徐々にレバレッジを下げていきます。 最後に局面3に入りレバレッジはかけずポートフォリオには株式以外の債券が加えられます。 局面3の頃には従来の投資戦略とほとんど変わらないポートフォリオになっていきます。
局面が1->2->3と進むに従ってレバレッジが下がっていますが、余剰資金による投資金額は増えているはずなので、生涯を通して投資金額を均すことができます。

局面1

ライフサイクル投資戦略における局面1は働きだしてから約10年間となります。
書籍内には中央値の参考として表が掲載せれていますが、だいたい30歳頃までを局面1として取扱っています。 局面1では株式への投資割合は200%、つまり、余剰資金に2倍のレバレッジをかけて投資を行います。

局面2

局面1が終わり、次に30代後半ごろまでを局面2として扱います。
局面2ではレバレッジの割合を徐々に下げていきます。それでも100%以上を株式に投資します。

局面3

最後に仕事を引退するまでを局面3として、株式以外の債券もポートフォリオに加えます。
50代半ばまでは相変わらず資産における株式の割合を50%以上と高く保ちます。 そして引退する直前までくると株式の割合を下げ、債券等の割合が多くなります。

引退後

引退後は資産を取り崩すフェーズに入るため局面3で戦略としては終わりとなります。

ライフサイクル投資戦略のまとめ

ライフサイクル投資戦略は生涯を通して時間分散し、株式資産の割合を一定に均す投資戦略です。
資産割合を一定に均すためには人的資本を考慮する必要があります。 人的資本を考えると若い間は債券比率が多くなり株式への投資割合が足りていません。 また、株式投資に使える余剰資金も多く用意できないと考えられます。 そこで、レバレッジを使い株式に余剰資金の200%投資することで不足分を補います。 そうすることにより生涯の株式投資割合を均すことが可能となり従来の投資戦略より安全で多くのリターンを得ることができます。